骨とコラーゲン
カルシウムや筋肉と骨頭骨、脊柱、手足などの骨は私たちのからだをささえ、まとめて「骨格」といわれます。骨格がなければ、私たちのからだはグニャリとそのまま横たわり、身動きできません。骨がとても硬いのは、カルシウム塩つまり、リン酸カルシウムと炭酸カルシウムが重さにして70パーセントほどもふくまれているためです。

それらは燃えないので、火葬のあとも骨は原形を保っています。もし骨を10パーセントの硝酸にひと晩浸しておくと、ブヨブヨした骨が残ることでしょう。これは、カルシウム塩は溶けて、骨の重さの30パーセントを占める「コラーゲン」というタンパク質繊維が残ったものです。

コラーゲンは、骨の主成な成分であるばかりでなく、からだ中のいたるところにあって、繊維や膜をつくり組織を保護しています。皮膚の下にもコラーゲン繊維が層をなして、しなやかさを保っています。靴やコートをつくるのに用いられる皮革は、コラーゲン繊維層の集合体なのです。骨格筋を包みこんでいる俗に″スジ″とよばれる白い膜も、コラーゲン繊維からできています。私たちのからだでもっとも多量にあるタンパク質はコラーゲンで、全タンパク質の約三分の一を占めています。人体には200個以上の骨があり、これらはそれぞれ決まった形と大きさをもっています。

けれども、共通したつくりがみられます。骨の表面はうすくて大きな「骨膜」でおおわれています。この骨膜はコラーゲン繊維からできています。骨膜には栄養分を補給する血管が多く通っており、内側にある造骨細胞が新しい骨をつくりだします。骨膜の下には、硬い「ちみつ骨」があります。ちみつ骨には、コラーゲン繊維とカルシウム塩の集まった硬いつくりの中に小さな孔が多数あり、その中に造骨細胞から変わった「骨細胞」が一つずつ入っています。

小さな血管が入りこんでおり、骨細胞に酸素や栄養分を送ってコラーゲンをつくらせます。ちみつ骨の中側にはすかすかな網目状の「海綿状骨」があり、すきまにはやわらかい「骨髄」があります。骨髄には、赤血球や白血球(リンパ球など)をつくる重要なはたらきがあります。放射線を多量に浴びると骨髄のはたらきが損なわれます。細長い骨の両端には軟骨があり、それが海綿状骨となって成長していきます。

カルシウムイオンと筋肉
骨格筋は運動神経の刺激によって収縮します。刺激がなければ、筋肉は弛緩状態にとどまっています。神経の刺激とは、電気的信号興奮(インパルス)です。この神経インパルスと筋収縮の関係は「興奮収縮連関」とよばれて、生理学上の大きな問題のひとつでした。

とても解決のできない問題と思われていましたが、この連関には意外にもカルシウムイオン(Ca2)が仲介となっていることがわかりました。神経インパルスは、筋繊維内のカルシウム貯蔵部からカルシウムを放出させることが明らかになったからです。微量のカルシウムイオンが、アクチンとミオシンの反応を起こすというわけです。カルシウムが除かれるとミオシンーアクチン反応は終わって弛緩します。

どこにでもある金属イオンの一つであるカルシウムイオンが筋収縮を支配しているとは、まったく予想外でした。この筋制御のしくみの解明がきっかけとなって、「細胞内信号」という新しい生体内情報系の研究がひろく展開されるようになりました。

カルシウムポンプ
筋小胞体膜上には、カルシウムポンプが多数存在しています。これは1949年にマイヤーホフが発見した「マグネシウム活性ATPアーゼ」で、江橋が筋弛緩因子を同定するさいに目安となりました。カナダのデイビッド・マクレナンはこのポンプを、分子量10万の酵素、筋小胞体ATPアーゼとして単離しました(1970年)。彼は、1985年に遺伝子解析から、この酵素のアミノ酸配列を決定しました。このカルシウムポンプは、ATP一分子を分解しながら、三分子のカルシウムを筋小胞体内に取り込みます。

筋小胞体の膜蛋白質の70パーセントを占めるカルシウムポンプは、筋肉が静止していても活動していても、常時カルシウムを取り込みつづけます。2001年、カルシウムポンプの立体構造が江橋の孫弟子にあたる東京大学の豊島近によって明らかにされ、カルシウムの取り込みのようすが理解されるようになりました。
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